アメリカの保険制度

日本では国民保険や健康保険など、公的にカバーされる医療保険が存在しています。所得に応じた保険料を払っていれば、医療に掛かった金額のうち何割かを本人が支払い、治療が受けられますが、アメリカではこうした医療保険制度がないため、国民のおよそ3000万人が非保険者であるといわれています。
65歳以上の高齢者や重度の障害者を対象にしたメディケアと、低所得者のために設けられたメディケイドを除いて、会社の保険制度を利用する他は、個人で民間の保険会社に加入しなくてはいけません。そのため民間の保険会社は様々なサービスを提供していますが、低額の保険に入ったら、保険が使えない病院があったり、保険契約内容に応じ保険会社の許可がおりず、必要な医療を行なうことができないという事態が生じることがあるので、保険の知識と内容をきちんと把握しておかなくてはいけません。また公的にカバーされることがないので、健康管理は自分でするという自主性が求められる傾向にあります。

従来型

インデムニティー(Indemnity Plan)

Fee for Service Planとも言われます。患者は自由に医者や病院を選べ、医者側も大きな制限無しで、診察や医療行為を行なう事ができ、それに対しての出来高払いで保険がカバーされます。保険加入者の負担額には、それぞれ免責額(年間約500〜1000ドル)が設定されており、その額までは個人で支払います。それを超えた額を支払った場合、保険会社が超過額の一定割合(約80%)を支払い、残りは自己負担となります。また、年間の自己負担限度額も決まっており、それを超えると保険会社が100%負担するようになっています。比較的、個人での負担額が大きいので、このプランに加入する人は少なくなっています。

管理医療型

Preferred Provider Organizations (PPO)

HMOと同様にネットワーク内の医療受診は比較的個人負担が少ない上、ネットワーク外の医師も選択できるのが特徴で、最近利用率が高くなっています。ネットワーク内の医師にかかる場合のCo-payは、HMOの1回10〜30ドルの患者負担に比べると少し高めとなっているケースが多い様です。ネットワーク外の医師にかかる場合は、治療費が免責額以内であれば全て自己負担となり、免責額を超えると治療費の何割かがカバーされるシステムになっているので、事実上、ネットワーク内の医師にかかるよりも自己負担の割合は高くなります。

管理医療型

Health Maintenance Organizations (HMO)

管理医療型の中で最初にできた組織。保険会社のもっているネットワークの中から主治医 (PCP:Primary Care Physician)を選択します。通院ごとにCo-payという決められた料金(約10〜30ドル)を払うのみで、免責額はありません。主治医を中心とした医療ネットワークによる構成になっており、例えば、神経、循環系など、主治医の専門でない部位の病気になったとしても、ネットワーク内の専門医を主治医から紹介してもらわなくてはなりません。紹介なく治療を受けた場合は、緊急の場合以外、保険のカバーが全くありません。自己負担額が比較的安いのが特徴ですが、受けられる治療や薬の種類も制限があります。また、保険会社自身の関与が大きすぎる、十分な治療が受けられないなどの批判もあります。

管理医療型

Point of Service (POS)

加入者が個々の病気に応じてHMOとPPOのどちらかの方法を選択する事ができるハイブリッド型の保険です。主治医を選択することが奨励されていますが、主治医なしでも治療を受けることが可能です。ネットワーク内の医師にかかる場合でも、主治医の推薦がないとCo-payや免責額が少し高めになります。ネットワーク外の医師にかかる場合は、PPOと同様に免責額を超えると、治療費の何割かがカバーされるシステムになっています。

その他の保険

歯科保険

歯科保険にも医療保険と同じように、HMOやPPOの様なシステムがあり、どのシステムを選択するかによって、カバーできる内容が変わってきます。保険がおりる金額は年間で制限があり、また、治療を開始する前には、歯の疾患(Pre-Existing Condition)の有無を確認する猶予期間(Waiting Period)があり、通常、約半年から10ヶ月間待たなくてはなりません。ただし、この猶予期間中でもクリーニングや定期検診などはカバーできることが多い様です。通常の治療の場合はほとんどが保険適用となりますが、歯列矯正や義歯は一部負担やオプションとなっている場合があります。

妊娠、出産時の保険について

日本での出産は健康保険ではカバーされませんが、国民保険に加入していて、母子手帳を持っていれば、出産一時金が30〜40万円もらえるので、それで出産費用をほぼカバーできます。アメリカでの出産は、都市や病院によっても変わりますが、自然分娩で3〜5千ドル、無痛分娩で1万ドル以上となっており、帝王切開になると1万5千ドル以上の費用がかかります。出産費用もカバーされる保険はありますが、妊娠が分かってからの加入ができるものは少なく、またあったとしても非常に高い保険料を払わなければいけません。出産を考えている方は、前もって保険に加入しておくことをお薦めします。

眼科保険

目の病気や怪我は通常の医療保険が有効となりますが、その他の定期的検査や眼鏡、コンタクトレンズに関する費用はカバーされないので、免責を望む場合は眼科保険に入る必要があります。

処方箋保険

医師から処方される薬の費用をカバーします。医療保険に自動的に付いている場合が多く、薬局でカードを提示すると、保険適用後の低価格か、もしくは無料で薬を購入する事ができます。ただし、その薬局がその保険に加盟していないと、個人で保険請求の手続きをしなくてはならない事もあります。

労働災害保険

Workers’Compensationと呼ばれているアメリカの労働災害保険は、従業員の業務上の不慮の事故、災害、職務が原因の病気などを補償をするもので、雇用主に対して加入と保険料の支払いが義務付けられています。基本的には州法に基づいているので、保険料や補償内容などは州によって異なります。業種によって保険内容や保険料は変わってきますが、通常、保険料は雇用主が全額負担します。